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研究内容

研究対象は,大凡以下のように分けられるかもしれません. 交通シミュレーションでは,安定性解析理論を用いて,LEGOマインドストームを研究に用います. 金融経済分野では,マルチエージェントモデル,進化的計算,ベイジアンネットワークなどの技術を用いますが,進化的計算とともにほとんどの作業を計算機で行います. ベイジアンネットワーク/データマイニングでは,ベイジアンネットワークとKinectを利用することになります.

研究室内の設備としては以下のものがあります.

農業×情報×シミュレーション

農業分野におけるデータサイエンスと情報システム開発について研究を行っています.具体的には,以下のようなプロジェクトに協力しています.特許などの取得につながる研究を行い,その成果を発表しています.具体的には,以下のものがあります.
細は知的財産権の関係でご説明できないところがありますので,ご興味のある方は,ご連絡いただき,研究室見学においでください.

ロボット制御プログラムの生成

少子高齢化の進展に伴って,農業分野においても交通物流分野においてもロボットの応用が広く求められている.農業分野においては,農作業社の高齢化にともなり,作業の省力化は重要な課題であって,ロボットの利用が求められている.交通分野においては,自動運転する車両を隊列走行することが求められている.

このようなロボットの行動プログラムを自動生成するために進化的計算手法を用いることについて研究している.

交通シミュレーションと交通渋滞緩和

交通渋滞は生活環境の悪化と経済損失の原因です.マルチエージェントシミュレーション,最適制御理論等を用いて,交通渋滞問題にチャレンジしています. この分野の研究はマルチエージェントシミュレーションを用いた研究と制御理論を用いた研究に大きく分けられます.

マルチエージェントシミュレーションを用いた研究には以下のものがあります. 交通渋滞の原因には様々な理由があるが,その中で道路構造に起因する渋滞を自然渋滞とよびます.自然渋滞の原因としては,サグ,カーブ,トンネル,合流などがあります.交通渋滞の緩和のために,直前方車両以外の車両情報を用いる交通制御について研究しています.この研究には以下のものがあります. 最近は,隊列走行など車両群の速度制御モデルについても研究しています.

確率速度モデルとセル・オートマトン法を用いた交通シミュレーション

平成14年、名古屋市の八事と本山の区間は地下鉄工事のために大きな渋滞を発生している.そこで、名古屋大学から日赤病院にかけての交通流をセル・オートマトン法によってシミュレートする。なお、この区間の道路は曲がりくねっているが、画面で表示しやすいように直線に変換している.最初に、道路工事がない場合の結果について示す。ここで、直進車両は白色、右折車両は緑色、左折車両は青色で表示されている。交差点のところ表示された赤ラインは赤信号を意味している。また、減速している車両は、後方が赤く表示されている.続いて、道路工事がない場合について示す。道路の一部に、細長い灰色部分が追加されている。これらは道路工事を示している。道路工事により、名古屋大学から名古屋第2日赤病院に向けての路上で大きな渋滞が発生し、渋滞長は工事のない場合の2倍近いことがわかる.

(左)道路工事無し


道路工事有り(右)
    

道路合流部での交通渋滞緩和に関する研究

本研究では,合流車両による後方車両への影響を小さくすることで,滑らかに速度変移させ,安定流への復帰を早めることを目的とする.まず,車両の行動は追従モデルで表現する.直前方車両だけから速度を制御する1台参照モデルと前方の複数台を参照する多台参照モデルにしたがって制御するモデルを考える.多台参照モデルを適用することで,合流車両に複数の後方車両が応答し,スムーズな速度遷移を行うことができることを示す.

1台だけ合流する場合を考える.合流部の様子を以下に示す.

赤い車両が合流車である.この場合の後続車の速度変化を示す.黒い線は合流車両を,他の線は本線を走行する車両の速度変化を示す.

多台参照モデル(右)

(左)1台参照モデル 

これらより,多台参照モデルのほうが速度低下が小さく,速度の回復も早いことが分かる.

隊列走行実験に関する研究

複数の車両を近接した車間距離で走行させることで交通量を増大させる技術を隊列走行と呼びます.隊列走行は,交通物流の増大と燃費性能の改善のために有効です.しかし,短い車間距離では,各車両の速度制御が難しい.例えば,LEGOマインドストーム5台を円形で走行させる(以下の写真)と.渋滞することなく安定した走行を実現しています.しかし,1台増えて6台になると走行は不安定となり,走行と停止を繰り返すようになります.そこで,本研究では多台参照モデルを用いて速度制御する方法を研究しています. そして,隊列走行を実施するための車両の速度制御モデルを研究し,それをレゴマインドストームの隊列走行実験に利用します.


(左)5台の場合 

 6台の場合(右)
Mindstormは,各種センサーやBluetooth通信を使って情報交換しながら隊列走行します.隊列走行実験の様子を以下に示します.


都市バス交通のシミュレーション

名古屋市では中央走行方式と呼ばれる特徴的なバスシステムがある.このシステムでは,バスレーンが最も中央よりの車線に設置されており,バスは道路の中央分離帯付近を走行する.中央バスレーン方式では道路状況の影響を比較的受けにくくなるため,バスの平均運行速度が向上し,バスの定時運行が可能になると考えられている.そこで,セル・オートマトン法を用いて中央バスレーン方式と通常の路肩バスレーン方式のバスシステムをシミュレーションし,両者を比較することで,それぞれの方式の長所と短所を比較検討する.

解析区間に対するバスの進入スケジュールを変更した場合について、バスの平均運行速度について調べる.まず,バス専用の場合の結果について述べる.左図はバス進入スケジュールとバス平均区間速度の関係を示す.これにより,中央バスレーン方式では,進入時間が0秒から50秒まで平均区間速度が一様に増加しており,そのあと一定になっている.このように,速度が変化するのは,バスが交差点に差しかかったときの信号の状態により,バスが道路から出ることができるタイミングが変わるからである.路肩バスレーン方式ではバスの平均区間速度が中央バスレーン方式と比較して最大13%遅くなっている.これは路肩バスレーン方式では,バスが左折車の影響を受けるためである.

名古屋市市バスにおける実際の測定結果はあまり多くないが、あるデータによれば中央バスレーン方式採用前の平均速度が14.56km/h,採用後の平均速度が19.16km/hであり,平均速度が約24%向上している.これは,我々のシミュレーション結果の約13%に比べてかなり大きい.実際の市バスにおいては,路肩バスレーン方式から中央バスレーン方式に変更するほかに,停留所数を23から17に減少するなどの方法もとられたので,総合的なシステム改善により上記のような速度改善を得ることができたと考えられる.次に,バス優先の場合の結果について述べる.右図はバス進入スケジュールとバス平均区間速度の関係を表す.バス専用の場合と比較すると,路肩バスレーン方式では若干バス平均区間速度が遅くなった程度であった.これに対して,中央バスレーン方式では,バスの進入スケジュール40秒以上ではバス平均区間速度が極端に遅くなっている.中央バスレーン方式では停留場が交差点付近に設置されているので,一般車両がバスレーンに進入して渋滞してしまった状態で赤信号になり,バスが停留所に近づけないために生じた.実際の道路における状況と比較検討する必要がある.


進化的計算と構造最適化に関する研究

今では想像しにくいと思うが,指導教員は工学(しかも機械工学)の出身で,最初に行っていた研究はこの分野が一番近かったのですが...この分野は大きく理論と応用に分けることができる.理論面では,例えば以下のような研究を行っています. 応用面では以下のような研究を行っています.

文法進化の関数同定問題への応用

文法進化は,遺伝的プログラミングと同じく,何らかの目的を満足する関数やプログラムを生成することを目的とする.特徴は,一次元配列の遺伝子型と関数やプログラムなどの表現型の置換規則をあらかじめ定義して用いることにある.個の点を除けば,探索アルゴリズムは遺伝的アルゴリズム(GA)とほぼ同様となる.文法進化の改良と実問題への応用を研究している.代表的な実問題としては,日経平均株価の予想関数同定問題がある.1984/1/4~2007/12/28の日経平均株価の終値のデータを学習し,2008/1/4~10/6の終値を予測する関数式をGEで生成する.得られた最良個体の予測株価を実株価と比較すると以下のようになる.

PSOのパッキング問題への応用

粒子群最適化法(Particle Swarm Optimization; PSO)は,鳥の群れの動きに基づく最適化手法です.個々の粒子の位置ベクトルが関数の解候補を示します.それまでに全ての粒子が発見した最も良い解と,各粒子が見つけた最も良い解の情報を元に各粒子の位置ベクトルを更新することでより良い解を求めます.これをパッキング問題の解析に適用しました.パッキング問題は,与えられた領域に不特定の物体を隙間なく配置する問題です.基本的なアルゴリズムと改良アルゴリズムを示し,改良アルゴリズムではより多くの物体を詰めることができました.
PACKING.JPG - 13,229BYTES

いびつな領域に正方形の物体を詰め込んだ例.

セルオートマトン法による構造物設計

セルオートマトンでは,空間を正方形セルの集合に,時間を離散時間に分割する.セルには状態量が定義されており,注目するセルの状態量はそのセルと周辺セルの状態から更新される.これによって現象をシミュレートする.本研究では,これを2次元や3次元弾性体の構造最適化問題に適用する.初期状態より軽量で強度の高い構造物が決定できている.


構造物の最適化過程
    

Kinectを用いたインテリジェントシステムデザイン

Kinectは,MicroSoft社が提供する非接触型のジェスチャー入力ゲームデバイスであって,人体の各部位の三次元位置情報を取得することができる.また,RGBカメラ,深度センサーを搭載する他,マイクロフォンアレイによる音声録音機能を有している.

Kinectを用いることで,インテリジェントで環境や人間に優しいシステムやサービスのデザインを開発しています.


Kinectによる転倒防止訓練ゲーム

高齢者の転倒防止のために定期的な運動は欠かせないが,訓練のための運動は楽しい作業ではない.そこで,Kinectを用いて運動能力訓練ゲームを作成しています.


Kinectによる個人認証システムの研究

Kinectから得られる個人情報(容姿,行動)などを元に個人認証を行うシステムを開発しています.(詳細は一部非公開)

Kinectによる自動ドアのインテリジェント制御

Kinectにより歩行者の行動を予測し,それにあわせた自動ドアの動作を行う.このようなシステムを用いることで,高齢者や要介護者などに優しい,また,場合によっては防犯対策としても利用できる自動ドアの制御を行います.(詳細は一部非公開)


ベイジアンネットワーク/データマイニング/Webサービスに関する研究

ベイジアンネットワークは確率推定モデルの一つで,確率変数間の因果関係を有向グラフで,関連性の強さを数値で表現する.過去のデータから変数間の関連性を測定し,それを元に現在データから将来起こりえる結果を推定することができる.ベイジアンネットワークの基礎研究と応用研究を行っています.基礎研究としては以下のことを行っています.第1が基本的な方法で,第2が計算効率の改善方法の提案です. 一方,応用研究としては,以下のようなことを行っています. そのほかに,ベイジアンネットワークをレコメンデーションに応用することも扱っています. レコメンデーションとは,利用者の嗜好情報や行動履歴などを元に求めている品物やサービスを類推して提供する技術です.

ベイジアンネットワークによる株価指数の予測

株価予測のために,過去データを用いた時系列分析に基づくモデルが一般的である.これらのモデルでは,予測したい株価を過去の株価等と残差の線形和で近似し,分布には正規分布が仮定される.しかし,実データに関するいくつかの知見によれば,株価収益率の頻度分布は必ずしも正規分布しないことが示されている.そこで本研究では,ホワイトノイズを用いない,ベイジアンネットワークを用いる予測法を示す.ベイジアンネットワークは離散的な値だけしか扱うことができないので,クラスタリング手法を用いて株価を離散値に変換する.解析例では,日経平均株価とトヨタ自動車株価をとる.収益率を適切に離散化すれば,相関係数解析や平均二乗誤差において,一般的な時系列分析モデルよりも精度良く予測できることがわった.最近では,この方法を拡張した手法についても提案している.



日経平均株価予測のベイジアンネットワークの例
予測しようとする株価が,何日前の株価と関連性が強いかを示している.
    

金融経済システムに関する研究

この分野は,手法や対象によって大きく3種類くらいに分かれる.第1はベイジアンネットワークや進化的計算を用いた金融指標の予測に関する研究(すでに述べた)であり.第2はマルチエージェントシミュレーションを用いた人工市場モデルによる研究である.そして,第3は,応用数学や時系列分析を用いたリスク分析に関する研究である. 株式市場に限らず,人間の行動には人の心理の影響が大きく現れています.同じことでも,そのときの人の気持ちの持ち方によって対応の仕方が変わってきます.このような,市場取引における人間心理の影響が市場の価格変動に大きな影響を与えます.その影響をマルチエージェントシミュレーションを用いてモデル化・分析する研究を行っています. 社会現象には波があり,それにともなうリスクがつきまといます.そこで,リスクを回避(ヘッジ)するための手法について研究しています.

投資家におけるアンカーリング効果が市場に与える影響

アンカーリング効果とは「アンカー(自分の知っている物事や数字,参照値) に基づいての推定が,意思決定の結果に大きな影響を与える」ことである .株式投資におけるアンカーリングとして,投資家が株の購入価格にこだわり,そこを基準にして投資判断をすることがよく知られている.マルチエージェントモデルによってアンカーリング効果の市場価格への影響を検討する. TypeA(アンカーリングの強い)エージェントは市場価格の下落に過敏に反応し注文価格を突然下げている.それに対して,TypeB(アンカーリングの弱い)エージェントは新しい情報から早めに修正するため注文価格は比較的安定的に推移している.この結果,TypeAエージェントは損切りが遅れて損失が膨らみ赤字になっている場合が多い.これは実市場でも見られる現象である.




エージェントの注文株価の変化

魚卸業者のリスクヘッジを目的としたスワップの設計情報処理学会コンピュータサイエンス領域奨励賞を受賞)

本研究では,魚養殖業者の価格リスクを回避するためのスワップ契約について述べる.スワップ契約は魚養殖業者とデリバティブハウス,漁業協同組合とデリバティブハウスの間で締結される.設計した養殖カンパチスワップを導入することで,養殖カンパチ業者は価格を安定化させ,価格が赤字化する確率を大幅に改善できることがわかった.あわせてデリバティブハウスの収益についても検討した結果,養殖カンパチスワップと同時に天然カンパチスワップを締結することで,デリバティブハウスはリスクの安定化を図ることができた. スワップ締結前と比較すると,スワップ締結後は収入が赤字となる可能性が低下している.そのため,平均すると黒字になると予想される.




予想される収支の頻度分布図

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