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都市バス交通のシミュレーション
中央バスレーン方式のシミュレーション
交通渋滞は,現在都市生活を営んでいく上で大きな社会問題のひとつとなっている.交通渋滞による最も大きな問題点は輸送コスト及び輸送時間が増加し,大きな経済損失をもたらすことである.これらの問題に加えて、交通現象が環境や地球温暖化へ与える影響を評価し,改善することが重要な課題となっている.ところで、都市交通政策においてはマイカーなどの個人の交通手段と公共交通機関など複数の交通手段を組み合わせて利用することで、利便性を確保しながら環境への影響を押さえるような方法がとられる。そこで、都市交通におけるバスの効果的な利用方法の検討はきわめて重要となる。
名古屋市では、中央走行方式と呼ばれる特徴的なバスシステムがある。このシステムでは,バスレーンが最も中央よりの車線に設置されており,バスは道路の中央分離帯付近を走行する.中央バスレーン方式では道路状況の影響を比較的受けにくくなるため,バスの平均運行速度が向上し,バスの定時運行が可能になると考えられている.そこで,セル・オートマトン法を用いて中央バスレーン方式と通常の路肩バスレーン方式のバスシステムをシミュレーションし,両者を比較することで,それぞれの方式の長所と短所を比較検討する. | ![]() |
![]() | 解析区間に対するバスの進入スケジュールを変更した場合について、バスの平均運行速度について調べる.まず,バス専用の場合の結果について述べる.左図はバス進入スケジュールとバス平均区間速度の関係を示す.これにより,中央バスレーン方式では,進入時間が0秒から50秒まで平均区間速度が一様に増加しており,そのあと一定になっている.このように,速度が変化するのは,バスが交差点に差しかかったときの信号の状態により,バスが道路から出ることができるタイミングが変わるからである.路肩バスレーン方式ではバスの平均区間速度が中央バスレーン方式と比較して最大13%遅くなっている.これは路肩バスレーン方式では,バスが左折車の影響を受けるためである. |
名古屋市市バスにおける実際の測定結果はあまり多くないが、あるデータによれば中央バスレーン方式採用前の平均速度が14.56km/h,採用後の平均速度が19.16km/hであり,平均速度が約24%向上している.これは,我々のシミュレーション結果の約13%に比べてかなり大きい.実際の市バスにおいては,路肩バスレーン方式から中央バスレーン方式に変更するほかに,停留所数を23から17に減少するなどの方法もとられたので,総合的なシステム改善により上記のような速度改善を得ることができたと考えられる.
次に,バス優先の場合の結果について述べる.右図はバス進入スケジュールとバス平均区間速度の関係を表す.バス専用の場合と比較すると,路肩バスレーン方式では若干バス平均区間速度が遅くなった程度であった.これに対して,中央バスレーン方式では,バスの進入スケジュール40秒以上ではバス平均区間速度が極端に遅くなっている.中央バスレーン方式では停留場が交差点付近に設置されているので,一般車両がバスレーンに進入して渋滞してしまった状態で赤信号になり,バスが停留所に近づけないために生じた.実際の道路における状況と比較検討する必要がある。 | ![]() |


